東京地方裁判所 昭和45年(借チ)11号 決定
〔主文〕1 申立人が、相手方に対し、本裁判確定の日から三か月以内に金一、一八六、〇〇〇円を支払うことを条件に別紙目録記載の賃貸借契約の目的を堅固建物所有に変更する。
2 前項により契約の目的が変更された場合(一)契約期間を前項の金員支払の日から三〇年延長し、(二)賃料を、右金員支払の月の翌月から一か月3.3平方米当り金一〇〇円に改める。
〔理由〕一 本件申立の要旨
1 申立人は、昭和九年六月小宮久蔵から別紙目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を木造その他の堅固でない建物所有の目的で賃借し、その後相手方が賃貸人の地位を承継し、昭和三八年七月二五日期間を二〇年延長する旨の契約の更新をした。
2 申立人は本件土地のうえに木造トタン葺平家建、居宅および工場を所有している。
3 ところで、申立人が本件土地を賃借した当時本件土地附近は、木造建物のみであつたが、その後防火地域に指定され、附近一帯に鉄筋建物が林立してきており、現に借地権を設定するには堅固な建物を所有を目的とするのが相当であるに至つたので、申立人は前記建物を鉄骨陸屋根コンクリート造三階建に改築すべく相手方と協議したが、まとまらないので借地条件を変更して堅固な建物所有を目的とする裁判を求める。
二 当裁判所の判断
1 取調べた資料によれば、申立人は昭和九年ごろ小宮久蔵から本件土地を木造その他の堅固でない建物所有の目的で賃借し、その後相手方が賃貸人の地位を承継したこと、申立人と相手方との間に昭和三四年ごろから更新料をめぐつて紛争を生じ、昭和三八年七月二五日ごろ、更新料として3.3平方米当り金三、〇〇〇円、期間を昭和三四年一月一日から二〇年とする旨の更新契約が成立し、申立人と相手方間の本件土地賃借の契約条件は別紙目録記載のとおりであることを認めることができる。
また、前記資料によれば、本件賃貸借契約が結ばれた当初においては、本件土地附近は木造建物が大部分であつたが、現在においては、本件土地附近は準防火地域に指定されたほか、準工業地域、第二種特別工業地区ないしは商業地域に指定され、中小企業の工業地域又は商業として発展が見込まれ、堅固な建物の数は多くはないが、今後改築に際しては堅固な建物とすることが見込まれるのであるから、現段階においても、事情の変更により堅固な建物所有を目的とするのが相当であると認めることができ、他に本件において条件変更を不当とする事由はないので、本件申立はこれを認容すべきである。
2 附随の処分につき検討する。
鑑定委員会の意見の要旨は「借地人に財産上の給付として金一六〇万円、地代を坪当り3.3平方米当り月金一〇〇円とする。給付額の算出方法は木造建物と堅固建物所有の借地権価格の差(更地価格3.3平方米当り金二〇万円の一五%)と期間を三〇年延長することによる得べかりし更新料(更地価格の一〇%を基準)の合計額による。
というにある。
本件借地条件の変更にともない申立人に財産上の給付を命じ、地代を増額するのが相当である。
まず、財産上の給付額につき判断する。借地条件変更の裁判にともなう財産上の給付は、右裁判による賃貸人の蒙むる不利益のうち賃借人の受ける限度において右利害を調整することにあるが、右裁判にあつては、その利害は結局条件変更前後の借地価格の差としてとらえるのが相当である。鑑定委員会は、本件土地価格を3.3平方米当り金二〇万円とし、借地権割合が七〇%から八五%に上昇するとしている。当裁判所も、右意見を相当と認めるので、申立人に対し、金一、一八六、〇〇〇円(千以下切捨て)の支払を命じ、かつ期間を右金員支払の日から三〇年間延長する。鑑定委員会は、右金員に、更に期間延長にともなう得べかりし更新料を加算するが、条件変更に通例ともなう期間延長による不利益はすでに、借地権価格の差の中に含まれていると解されるので、重ねて更新料を加算するのは相当でない。
なお、地代は、条件変更にともなう土地利用効率の増大により増額するのが相当であるから鑑定委員会の意見のとおり一か月3.3平方米当り金一〇〇円に増額する。(筧康生)
目録
(借地契約の内容)
1 目的土地 東京都墨田区京島二丁目一二六ノ一
186坪のうち39.54坪(130.71平方米)
2 当事者 賃貸人 相手方
賃借人 申立人
3 目的 非堅固建物所有
4 期間 昭和五三年一二月三一日まで
5 現地代 一か月金二、三七五円(3.3平方米当り金六〇円)